子供じゃないもん'17

生きるって超せつない

「ごめんね」と先に言った君の

何もかも先を読んでそうしているかのような

決まりきった困り顔をみて

私はいつものように「負けた」と思った


あの日、別れのことばは

「ありがとう」だった。

謝りたいことなんてたくさんあるけど

それよりも君には感謝することがたくさんあった。ただそれだけのことだ。

何も言わない君の表情から

一生懸命にその心を読み取ろうとした。

でも、考えれば考えるほど

君の気持ちとは違う気がした。


君は何も言わず、どこにも触れず、

ただ静かに後ろをむいて歩いていってしまった。



別れのキスくらいかっこよくしてくれよなんて思った。


でも、そういう軽率ではないところが

好きだったんだ。なんだか笑えた。







夜道を行け、物思いにふけろ


ふくよかでやさしそうに笑う人。


娘たちのことを大切にしている人。 


身を綺麗に保ち、縁を、人を大切にしていて仕事できる人。


熱意があって、不器用そうだけどちゃんと目の前のこと見てる人。


うーんとこの人は…2人きりで話したら話が合いそうな人。





夜の店には、たくさんの働く男が集う。

身につけているものが立派で話し方や所作まで綺麗な人。ほがらかに笑って上司の話を聞く人。とにかく熱く語り続ける人。ゲラゲラと下品な話をしつつも、時折見える気遣いに出世の理由が見える人。

もう本当にたくさんの人がいるものだから

ここにいると、人間っておもしろいなぁと思う。

私は冒頭のように、いつもひとりひとりのいいところを探すようにしている。

飲みに来てるおじさん、としてじゃなく、1人の人間として向きあって吸収できることはしてやろうと思っているからだと思う。


深夜1時をすぎると、

みんな立派なコートから

財布をとりだして現実にもどっていく。

その瞬間、どうしてか

みんな本当に一生懸命生きているなぁ

と、小娘ながらに思う。


常連のお客様とママたちを残して

おつかれさまでしたー、と店の扉を開ける。

いつもなら小腹がすいて我慢できず

コンビニでカップラーメンを買って、

タクシーに乗り込んで帰る。

でも、今日はなんとなく、なんとなくだけど

少し歩いてみたくなった。

少し歩いて、つかれたらタクシー拾おう。

そのくらいの気持ちで、

夜の街を歩き始めた。


繁華街から一本出た大きな通りは

規則的にならんだ蛍光灯に照らされて、

しずかにそこにあった。


不思議と明るい道を選んで歩きたくて

まっすぐ、まっすぐ歩いた。



途中、ひきよせられるように

昔住んでいた家の近くを通る。

暗い道だけれど、なつかしくて安心する。

昔オレンジ色に煌々と光っていた

塾があった場所が

空きテナントになっていた。


それだけで、

どうしてこんなに悲しくなるんだろう。





途中、やはり歩くのにつかれてしまい

なんどもタクシーを呼ぼうとする。

でもなぜかはわからないけど

「もう少し」って自分の体に言い聞かせる。

もう少し、もう少し。

あのコンビニについたら、あの信号を超えたら、あの横断歩道をわたったら。

そうやっていたら、もう自分の家の前に立っていた。




もう少し。

もう少しでたどりつくんだ。

自分から。



がんばればたどりつける。

少しでもそう願う私の

不器用な心の表れだったのかもしれない。





夜の隙間に抱かれて



明日はやいからと

時計の針がてっぺんで重なる前に

少し冷めた布団に入る。


いつも夜更かししている人が

そんな簡単に寝れる訳がないのだけど


深い呼吸をすることに集中してみたり

ベタとわかっていながら羊をかぞえたり

一応、がんばってみる。



どうしてだろう。

寝よう寝ようと思うほど

どんどん脳が覚醒してくる。

目が冴えてくるのだ。



もう無駄だと諦めて体を起こし

近くにあった飲みかけのペットボトルに手を伸ばす。なんだか夜の味がする。


カーテンの隙間から街灯の光が差し込んで

もうしばらく読んでいない本たちを照らしている。



眠ることを諦めた夜。

まるでドラマの主人公みたいに

夜が私を輝かせる。



そうだ、散歩に行こう。

いかにも気怠そうなスウェットのまま

私は夜への扉を開けた。