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「ごめんね」と先に言った君の
何もかも先を読んでそうしているかのような
決まりきった困り顔をみて
私はいつものように「負けた」と思った
あの日、別れのことばは
「ありがとう」だった。
謝りたいことなんてたくさんあるけど
それよりも君には感謝することがたくさんあった。ただそれだけのことだ。
何も言わない君の表情から
一生懸命にその心を読み取ろうとした。
でも、考えれば考えるほど
君の気持ちとは違う気がした。
君は何も言わず、どこにも触れず、
ただ静かに後ろをむいて歩いていってしまった。
別れのキスくらいかっこよくしてくれよなんて思った。
でも、そういう軽率ではないところが
好きだったんだ。なんだか笑えた。