子供じゃないもん'17

生きるって超せつない

夏のはじまり

 
 
 

桃色の景色はいつの間にか

青い緑でいっぱいになっていて
半袖にサンダルでも
ぜんぜんへっちゃらな季節の変わり目
 
つめたい麺がたべたくて
あなたを迎えに車を走らせる
よく行くチェーンのうどん屋さんに行って
あなたは欲張って大盛り揚げ2つ
わたしは半熟たまご
 
タワレコでニューシングルかって
あっついねってアイスをたべた
あなたはオレンジ、わたしはバニラ
 
もうお腹はいっぱいだったけど
ラムネを買って2人で飲んだ
彼の服にしゅわりと飛んだ
あーあと言って笑いあったね
 
 
わたしたちだけの夏のはじまりだと本気で思っていた
ガラスが転がる音がして
夏ってこうやってはじまるんだね
いつか夏が来るまで、わたしたちだけの夏だ
 
 
 
はしゃいで笑って
いつもの場所へ帰ってふたりで眠ろうね
 
窓から風と子どもの声
あなたの腕の中から
揺れるカーテンを見つめてた
 
いつまでもこのままでいたい
このまま夏のはじまりだけでいい
少ししか読んでいない長編小説みたいに
わたしはずっとこのままがいい
 
 
君にくっついた肌と肌のすき間
あせがにじんでる
でも今は、ひとつになったから
そんなことはどうでもいっか
 
わざと忘れた腕時計
それを見て私を思い出してね
君に逢えるのなら
私簡単に嘘つけちゃうんだよ
 
 
 
その夏が終わる直前に
街で君を見つけた
今日も半袖サンダルなのね
見たこともない幸せな顔
 
かわいいあの子と
アイスをたべてる
君の本当の夏は楽しそうだね
 
 
少し前に君が飲みほしたラムネが
足に当たって痛かった
からんころんと鳴るガラス玉は
あの時とは違う音みたい
 
 
「あの子誰?」なんて聞かない
わすれものを届けてくれた君は、いつもどおりで
わたしも何もなかったみたいに
また君の中で眠りにつく
 
 
線香花火みたいな幸せでも
君がくれるから、うれしいよ
 
 
 
夏がおわるね